人材紹介業は個人事業主でも可能!免許申請時の注意点・事業運営上のリスクは?

フリーランスや副業など、働き方が多様化する現代で、人材紹介業の個人事業主としての開業が注目を集めています。法人設立と比べて初期費用や手続きが抑えられるため、「スモールスタート」で始めやすいのが魅力です。
しかし、手軽に始められる一方で、事業を始めるには「有料職業紹介事業許可」の取得が必須となり、個人事業主では法人とは異なる高いハードルや注意点が存在します。
本記事では、なぜ人材紹介業を個人事業主として始める人が多いのか、そして事業運営上のリスクや注意点について、メリット・デメリット、開業までの流れを徹底解説します。賢くリスクを回避して、自由な働き方を目指しましょう。
目次
Toggleなぜ、個人事業主で人材紹介を開業する人が多いのか?
近年、個人の働き方が多様化する中で、会社に縛られずに自分の裁量で働きたいと考える人が増えています。その中でも、人材紹介業は「個人事業主」としての開業が比較的しやすいと注目を集めています。では、なぜこれほどまでに多くの人が個人事業主として人材紹介業を始めることを選ぶのでしょうか。
まず、大きな理由として挙げられるのは、スモールスタートが可能である点です。法人設立には費用や手間がかかりますが、個人事業主であれば開業届の提出のみで事業を開始できます。これにより、初期投資を抑え、リスクを最小限に抑えながらビジネスを始めることが可能です。また、他の事業と兼業しながら、あるいは副業として人材紹介業を始めるケースも多く、柔軟な働き方を求める人にとって魅力的な選択肢となっています。
次に、自身の経験やスキルを最大限に活かしたいという強い思いも背景にあります。例えば、前職では人材事業に携わっており、これまでに人材業界で培った知識や人脈を、会社の方針に縛られることなく自身のビジネスに直結させたいと考える元会社員も多いです。企業に属していると、どうしても会社の方針や目標に沿って動く必要がありますが、個人事業主であれば自身の理念に基づき、本当に価値があると感じるマッチングに注力できる点に魅力を感じる場合もあります。
さらに、高収入を目指せる可能性も大きな動機となっています。会社員の場合、給与やインセンティブの上限が設定されていることがほとんどですが、個人事業主であれば自身の努力と成果がダイレクトに収入に反映されます。成功すればするほど、青天井で収入を増やせる可能性を秘めているため、経済的な自由を求める人にとって魅力的な事業と言えるでしょう。
このような背景から、自由な働き方、自己実現、そして経済的自立を求める人々が、人材紹介業を個人事業主として始める道を選んでいます。しかし、手軽に始められる一方で、個人事業主ならではの注意点やリスクも存在します。次の章では、その具体的な注意点について詳しく解説していきます。
個人事業主の人材紹介免許取得にはいくつかの注意点が存在

注意点①:資産要件を満たすことができない
有料職業紹介事業許可を取得するためには、厚生労働省が定める「財産的基礎」に関する要件を満たす必要があります。これは、事業を安定的に運営していくための経済的な基盤があることを示すもので、具体的には以下の要件が定められています。
- 基準資産額が500万円以上あること
- 自己名義の現金または預貯金が150万円以上あること
- 直前の決算期における負債の合計が資産の合計を上回っていないこと
- 事業に用いることができる固定資産があること(オフィスなど)
ここが個人事業主にとって最大のハードルとなります。というのも、個人事業主の場合、事業主個人の資産と事業の資産が明確に区別されないため、上記の資産要件を満たすことが非常に難しい、あるいは不可能に近いケースが多いのです。
例えば、「自己名義の現金または預貯金150万円以上」という要件は、個人事業主のプライベートな預貯金を含めて判断されることになります。しかし、事業としての安定性を示すためには、あくまで事業活動に充当できる資産として客観的に判断される必要があります。そのため、厚生労働省は個人事業主に対して、この資産要件の適用を非常に厳格に解釈しています。
実際に、個人事業主で有料職業紹介事業許可を申請し、資産要件を満たせないために不許可となるケースは少なくありません。この資産要件は、事業の継続性や求職者・求人企業への信頼性を担保するための重要な基準であるため、安易に考えず、自身の資産状況を正確に把握し、現実的な選択をすることが求められます。
個人事業主として人材紹介業を始め、事業が軌道に乗って規模を拡大する中で、将来的に法人化を検討するケースは少なくありません。しかし、ここで知っておくべき重要な注意点が、個人事業主で取得した有料職業紹介事業許可は、法人に引き継ぐことができないという点です。
注意点②:法人への免許引き継ぎができない
- 費用と時間の再発生: 法人として再度許可申請を行うには、申請手数料や場合によっては行政書士への依頼料など、新たな費用が発生します。また、申請準備や審査にも一定の期間を要するため、その間は事業活動が停滞する可能性があります。
- 事業の一時的な中断リスク: 法人設立後、新たな許可が下りるまでの間は、有料職業紹介事業を継続できない期間が発生する可能性があります。これは、事業の機会損失や求職者、取引先企業といった顧客からの信頼低下につながるリスクをはらんでいます。
このようなデメリットを考慮すると、最初から法人での開業を検討したほうが良い場合もあります。特に、将来的に規模拡大や多角化を目指すのであれば、この「引き継ぎ不可」の点を踏まえて、事業計画の段階で法人化の時期を慎重に検討することが重要です。
個人事業主として人材紹介業を運営するメリット・デメリットは?
個人事業主として人材紹介業を始めることには、多くの魅力がある一方で、法人にはない独自のデメリットも存在します。ここでは、それぞれの側面を詳しく紹介していきます。

個人事業主として人材紹介業を開業するメリット
メリット① :開業の手間と費用が少ない
個人事業主として人材紹介業を始める最大のメリットは、開業に関する手間と費用を大幅に抑えられる点です。通常、法人を設立する際には、定款の作成、公証人役場での認証、法務局への登記など、複雑な手続きと数十万円単位の費用(登録免許税や印紙代など)が発生します。
しかし、個人事業主であれば、税務署に「開業届」を提出するだけで事業を開始できます。この手続きは非常に簡単で、費用もかからないので、、資金的な制約がある場合や、まずは小規模でスタートしたいと考える人にとって、非常にハードルが低い選択肢となります。
メリット② 自由な働き方と高い裁量をもつことができる
また、事業に関する全ての意思決定を自分自身で行うことができます。どのような求職者や企業と取引するか、どのようなサービスを提供するのか、料金設定はどうするのかなど、自分の理念や戦略に基づいたビジネスを展開できるため、自身の経験やスキルを最大限に活かし、やりがいを持って仕事に取り組めます。
メリット③ 収益を最大化できる可能性
個人事業主は、会社員のように給与の上限が決まっているわけではありません。会社員であれば、売上を上げても会社の利益となる部分が多く、個人の報酬には限りがあります。しかし、個人事業主の場合は、自身の努力と成果が直接的に収入に反映されるため、高収入を目指せる可能性を秘めています。個人事業主の場合、売上から経費を差し引いた利益のほとんどが自身の収入となるため、、成果を出せば出すほど、青天井で収入を増やせるチャンスがあります。自身の営業力やマッチングスキルに自信がある人にとっては、大きなインセンティブとなるでしょう。
個人事業主として人材紹介業を開業するデメリット
デメリット① 社会的信用度が低い傾向にある
特に、企業との契約や金融機関からの融資を受ける際に、この信用度の低さが問題となることがあります。特に大手企業との取引では、法人であることが条件となるケースも少なくありません。また、事業拡大のための資金調達においても、法人に比べて融資を受けにくい傾向にあります。
デメリット② 資産要件のクリアが困難
デメリット③ 責任の範囲が個人に及ぶ
法人化と個人事業主での開業どちらを選ぶべき?
- 社会的信用度が低い
- 法人への免許引き継ぎができない
- 費用と時間の再発生: 法人として再度許可申請を行うには、申請手数料や場合によっては行政書士への依頼料など、新たな費用が発生します。また、申請準備や審査にも一定の期間を要するため、その間は事業活動が停滞する可能性があります。
- 事業の一時的な中断リスク: 法人設立後、新たな許可が下りるまでの間は、有料職業紹介事業を継続できない期間が発生する可能性があります。これは、事業の機会損失や求職者、取引先企業といった顧客からの信頼低下につながるリスクをはらんでいます。
- まずは副業として小さい規模で始めたい場合: 例えば本業の収入があり、本格的な事業化の前に人材紹介業の感触を掴みたい場合など。ただし、この場合でも有料職業紹介事業許可は必要となるため、資産要件の問題は残ります。
- 資金が極めて限られている場合: 法人設立費用を捻出することが難しい場合。しかし、この場合でも事業の継続性を考えると、初期費用を抑えることと引き換えに、将来的なリスクや制約を背負うことになる点を理解しておく必要があります。
- 特定のニッチな分野で、ごく限られた範囲で活動する場合: 事業規模を拡大する予定が一切なく、個人的なネットワーク内で完結させるような場合。
【2025年版】個人事業主が人材紹介業を開業するまでの流れをご紹介
前述の通り法人としての開業を推奨しますが、もし何らかの理由で個人事業主として人材紹介業の開業を目指す場合、開業までの流れを理解しておくことは非常に重要です。ここでは、有料職業紹介事業許可の取得に焦点を当て、具体的なステップを解説します。
STEP1:厚生労働省が定める資産要件を満たす
- 基準資産額が500万円以上あること
- 自己名義の現金または預貯金が150万円以上あること
- 直前の決算期における負債の合計が資産の合計を上回っていないこと
- 事業に用いることができる固定資産があること(オフィスなど)
STEP2:税務署に開業届を出す
STEP3:有料職業紹介事業取得に向けた申請書類の準備する
- 有料職業紹介事業許可申請書
- 事業計画書
- 収支予算書
- 定款(法人化の場合)または住民票(個人事業主の場合)
- 代表者及び役員(法人化の場合)または事業主(個人事業主の場合)の履歴書
- 職業紹介責任者の履歴書
- 職業紹介責任者講習修了証明書
- 事業所の賃貸借契約書または不動産登記簿謄本
- 事業所の見取り図、平面図
- 資産状況を証明する書類(預金残高証明書、確定申告書など)
- 個人情報適正管理規程
- 求人者・求職者に対する手数料に関する規程
- その他、厚生労働省令で定める書類
STEP4:職業紹介責任者講習を受講する
STEP5:オフィスや人員を確保する
STEP6:人材紹介免許を取得する
【実際の声】成功者に聞く!個人事業主として人材紹介業を成功させるポイント
【個人事業主で人材紹介業を行なう際のポイントは?】
個人事業主として人材紹介事業を成功させるためには、「集客方法のポイント」「求人確保のポイント」「求職者属性のポイント」3つのポイントがあります。ひとつずつ説明していきますが、これらの3つの要素が合わさることによって、個人事業主でも安定的に人材紹介事業を運営することができていると感じています。
【集客方法のポイントとは】
人材紹介事業の継続的な運営でもっともネックとなりやすいのが、求職者の集客です。特に、組織に所属しない個人事業主の場合は、求職者を集めてくることもすべて一人で対応しなければなりません。そこで、個人事業主で人材紹介業を行いたい方におすすめしたいのが、リファラル(紹介)による求職者の集客です。自分自身の友人や親族などがリファラルとして思い浮かべやすいですが、その他、前職の同僚や顧客、SNSでの情報発信からの繋がりなどコネクションを活用することが最適です。その点では、これまで、人材業界を経験してた方はもちろんのこと、保険業界・不動産業界・ブライダル業界など個人のお客様と多く接点をもちつつ、深く関わっていくような仕事を経験している方は集客の面ではかなりのアドバンテージがあると思います。
【求人確保のポイントとは】
人材紹介事業の成功において、求職者の確保と同じくらい重要なのが求人の確保になります。とはいえ、個人で人材紹介事業を行なう場合、求職者の確保と並行して求人の確保を行なうのは現実的であるとは言えません。そこで、求人の確保については求人データベースなどのツールを導入することを推奨します。1つの求人データベースサービスと契約をするだけで、求職者に紹介できる求人の数が数千件~数万件増えるので、求人開拓の工数をかけることなく人材紹介事業を行なうことができます。
求人データベースは基本的に、月額利用料や成功報酬の数~数十%といった手数料を払うものがほとんどですが、年間に3名以上決定を生むことができればペイできるような金額にはなるので、余程の事情がなければ何かしらのサービスと契約をすることをおすすめします。
【求職者属性のポイントとは】
求職者と求人がある程度準備できたら次に考えるべきなのが、「決定率を高めていくこと」です。そのために実施したポイントが、求職者集客の属性を限定することでした。具体的には、自身の経歴や経験と親和性の高い求職者を集めることに注力することが重要なポイントとなります。例えば、過去に医療系の会社で勤務しており、業界の知識がある程度あるならば医療系の求職者に特化して紹介事業を運営したり、自身が高卒という経歴なのであれば、一定ローレイヤーの求職者を支援できれば同じ目線で話をすることができるので、自然と決定率が上がりやすくなります。一方で、年収500万円以上のハイレイヤー層向けの人材紹介となると、求職者獲得の競争率の高さや内定獲得までの難易度が上昇する傾向にあることから、立ち上げたばかりでその層を対応することは難易度が高いと感じます。
仮に個人事業主として人材紹介免許を取得できたとしても、求職者集客や求人の確保ができなければ事業を継続的に運営・拡大していくことは至難の業であるといえます。そのため、個人事業主として人材紹介事業を成功させたい場合は、事業運営上のリスクを理解したうえで、自身の強みを最大限に活かせる道を模索することが重要です。
まとめ|人材紹介業は個人事業主でも可能!事前にリスクを抑えて自由な働き方をめざそう!
本記事では、個人事業主として人材紹介事業を始めたいと考えている方向けに、人材紹介業を個人事業主として始めるメリット・デメリットを含め、様々な側面を深く掘り下げてきました。