【社労士監修】人材紹介会社を起業するには?要件・費用・流れまで解説

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人材紹介業は、オフィスや在庫を大きく抱えずに始められるため、独立を考える方にとって参入しやすい事業です。一方で、誰でも自由に開業できるわけではありません。求職者と企業の人生やビジネスを左右する仕事であり、国の許可を受ける必要があります。

この記事では、元労働局職員かつ社会保険労務士の視点から、人材紹介会社の起業に必要な要件・費用・期間・手続きの流れを順に整理しました。

人材紹介で起業するには?

人材紹介で起業するには、職業安定法にもとづく「有料職業紹介事業」の許可を取得する必要があります(申請窓口は都道府県労働局)。これは、人材紹介が求職者と求人企業の橋渡しを担い、社会的責任の重い仕事だからです。

なお、人材紹介事業のサービス形態は、大きく一般登録型・サーチ型・再就職支援型の3つに分けられます。

サービス形態 内容
一般登録型 求職者の登録を受けてマッチングする最も一般的な形態
サーチ型 企業の依頼に応じて現役人材を探し出すヘッドハンティング型
再就職支援型 リストラなどで離職する人の再就職を支援する形態

もし無許可で人材紹介業を行うと「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」という罰則が科される場合があります。

人材紹介会社を起業するために必要な要件

有料職業紹介事業の許可を受けるには、財産・職業紹介責任者・個人情報管理・事業所・事業運営の5つの要件をすべて満たす必要があります。許可基準は職業安定法と厚生労働省の指針で定められており、一つでも欠けると許可は下りません。

財産の要件

財産の要件は、事業を安定的に運営できる財産的基礎があることを示すものです。これは、紹介手数料が入るまでの運転資金を確保し、求職者保護を担保するために設けられています。

具体的には、次の2つの基準を両方とも満たさなければなりません。

  • 資産(繰延資産及び営業権を除く)-負債≧500万円×事業所数
  • 自己名義の現金・預金の額≧150万円 +(60万円×(事業所数−1))

事業所が複数ある場合は、基準資産額が「500万円×事業所数」、現金・預金が「150万円+60万円×(事業所数−1)」と増えていきます。

職業紹介責任者の要件

職業紹介責任者には、成年に達した後3年以上の職業経験があり、申請受理日前5年以内に職業紹介責任者講習を修了している人を選任する必要があります。職業経験の業種は問われないため、一般企業での勤務経験でも要件を満たすことが可能です。

小規模な人材紹介会社では、代表者自身が責任者を兼任するケースも多く見られます。なお、責任者は事業所への常駐・常勤が原則で、従事者50名ごとに1名を追加する必要があります。

個人情報適正管理の要件

個人情報適正管理の要件は、求職者の個人情報を適正に扱う体制を整えることです。人材紹介では、職歴や年収など機微な情報を大量に扱うため、漏えいや目的外利用を防ぐ仕組みが欠かせません。

満たすべき措置として、個人情報適正管理規程を定めていること が求められます。この規程には、情報の収集・保管・使用の範囲、本人からの開示請求への対応、取扱者の範囲などを盛り込む必要があります。

事業所の要件

事業所の要件は、職業紹介を適切に行える場所を確保することです。求職者のプライバシーを守り、落ち着いて相談できる環境が必要になるためです。

具体的には、風俗営業などが集まる場所でないこと、そして求職者・求人者のプライバシーを保護できる構造であることが求められます。

事業所は、風俗営業等が集まるなど職業紹介事業に適さない場所でないことに加え、プライバシーを保護して求人者・求職者に対応できる構造でなければなりません。面積がおおむね20㎡以上であること、または個室・パーティション等によりプライバシーを保護できることが判断材料になります。

ただし、実際の判断は事業形態や相談スペースの実質性を考慮し、管轄労働局が個別で判断します。間仕切りや個室の確保などプライバシー保護対策がなされていれば、認められる可能性があります。

事業運営に関する要件

事業運営に関する要件は、法令を遵守して公正に事業を運営できる体制を備えることです。求職者と求人企業の双方が安心して利用できる事業者であることを、国が確認する必要があるためです。

代表者や役員が、禁錮以上の刑や一定の労働法違反などの欠格事由に該当しないことが前提となります。

加えて、2025年1月からは「紹介により期間の定めのない労働契約で就職した人に対し、就職日から2年間は転職を勧奨してはならないこと、また求職申込みの勧奨について、社会通念上相当と認められる程度を超える金銭等を提供してはならないこと」が、許可条件に加わりました。

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人材紹介会社の起業にかかる費用

人材紹介会社の起業には、申請時の法定費用として合計14万円がかかります。ここでは、必要な費用を項目ごとに端的に整理します。

初期費用

初期費用は、法定費用に加えて資本金・講習料・事業所準備費・人件費などで構成されます。それぞれの目安を見ていきましょう。

資本金

資本金そのものに法定下限があるわけではありません。ただし、有料職業紹介事業の許可では、基準資産額500万円以上、自己名義の現金・預金150万円以上などの財産要件を満たす必要があります。

そのため、創業時は500万円以上の自己資金を用意しておくのが現実的です。

許可取得費用

許可取得費用は、登録免許税9万円と収入印紙代5万円の合計14万円です。これらは申請時に必ず納付する法定費用です。

事業所が1か所であれば14万円ですが、事業所が増えると印紙代が「5万円+1万8千円×(事業所数−1)」と加算されます。

職業紹介責任者講習会受講料

職業紹介責任者講習会の受講料は、おおむね12,000円〜13,000円程度です。

全国民営職業紹介事業協会をはじめ、厚生労働大臣が指定する実施機関で受講できます(受講料は実施機関により異なる)。講習は1日程度で修了し、修了の効力は5年間有効です。

事業所準備費用

事業所準備費用は、賃貸オフィスを借りる場合で数十万円〜100万円程度が目安です。敷金・礼金や仲介手数料、内装の費用などがまとまって必要になります。

具体的な金額は、立地や規模によって変わるため、事前の試算が欠かせません。なお、自宅やレンタルオフィスを活用すれば、この費用は大きく圧縮できます。

人件費

人件費は、代表者以外に従業員を雇う場合に発生する固定費です。

創業期は代表者が職業紹介責任者を兼任し、一人で始めれば人件費を抑えられます。事業拡大に合わせて、キャリアアドバイザーや営業担当を増やすのが一般的な流れです。

運用費用

運用費用は、許可取得後に事業を継続するためにかかる費用です。家賃や通信費といった固定費に加え、求職者や求人を集めるための集客費が大きな割合を占めます。

人材紹介の売上は成功報酬型のため、マッチングが成立するまで収益が発生しません。そのため、求職者・企業の集客に継続的なコストがかかる点を見込んでおく必要があります。主な集客方法を以下にまとめました。

集客方法の主な種類 サービスの例 目安費用 特徴
求人データベース 各種求人データベースサービス 月額数万円〜 求人情報を効率的に確保でき、求人開拓の手間を削減できる
求人広告・転職サイト 転職メディアへの掲載 掲載課金・成果課金など 求職者を広く集めやすいが、掲載費が先行する
自社サイト・SEO コーポレートサイト、オウンドメディア 制作費+運用費 中長期で集客資産になるが、成果まで時間がかかる
SNS・ダイレクトリクルーティング スカウト媒体、各種SNS 媒体利用料・運用工数 直接アプローチでき、サーチ型と相性が良い
リファラル・人脈 紹介、既存ネットワーク ほぼ無料〜謝礼程度 コストが低いが、母数が限られる

人材紹介会社の起業にかかる期間

人材紹介会社の起業には、申請から事業開始まで、おおむね3〜4か月の期間がかかります。申請後に労働局による書類審査と現地調査が行われ、その後に許可証が交付される流れになっているためです。

具体的には、要件を満たすための準備に時間を要するほか、申請から許可までに2〜3か月程度を見込みます。有料職業紹介事業の許可申請から実際に営業が開始するまでには、概ね3〜4か月の期間を要するのが一般的です。

なお、近年は申請件数が増えているため、状況によってはさらに時間がかかることもあります。

人材紹介会社を起業するまでの流れ

人材紹介会社の起業は、講習の受講から事業開始まで、大きく5つのステップで進みます。

1.職業紹介責任者講習を受講する

最初のステップは、職業紹介責任者講習の受講です。修了証は許可申請の必須書類であり、申請受理日前5年以内の修了が求められます。

講習は1日程度で、座学と理解度確認試験で構成されます。会場開催とオンライン開催があり、自分の予定に合わせて選択が可能です。受講申込は開催日の3か月前から受付が始まるため、早めに日程を押さえておきましょう。

2.事務所を確保する

2つ目のステップは、事業所要件を満たす事務所の確保です。事業所の使用権を証明する書類が申請に必要で、プライバシー保護の構造も審査対象になるためです。

賃貸契約を結ぶ際は、求職者との相談スペースを区切れるか、風俗営業が集まる立地でないかを確認します。自宅やレンタルオフィスを使う場合は、要件を満たせるかどうかを管轄労働局へ事前に相談しておくと安心です。

3.労働局へ書類を提出する

3つ目のステップは、本社所在地を管轄する労働局への書類提出です。有料職業紹介事業の許可申請は、労働局を経由して厚生労働大臣に対して行うためです。

主な提出書類は以下のとおりです。

  • 許可申請書
  • 事業計画書

  • 定款

  • 法人登記簿

  • 職業紹介責任者講習の受講証明書の写し

  • 直近の貸借対照表・損益計算書

  • 個人情報適正管理規程など

申請手続きをスムーズに進めるためにも、不備がないように準備しましょう。

4.労働局の現地調査を受ける

4つ目のステップは、労働局による審査です。原則として、書類審査に加えて事業所の実地調査(現地調査)が行われます。

現地調査では、相談スペースのプライバシー保護や個人情報の保管状況、事業所の独立性などが確認されます。

初回申請時の調査は必須ですが、更新時における現地調査は全件で必須ではありません。場合によっては、書類審査のみで完結するケースもあります(都道府県ごとに対応に差があります)。

5.許可証が交付され事業を開始する

最後のステップは、許可証の交付と事業開始です。審査に合格すると、厚生労働大臣名で許可証が交付され、その日から職業紹介事業を行えるようになります。

なお、事業の開始に合わせて、ホームページ・広告掲載などの準備を進めておくとよいでしょう。

まとめ

人材紹介会社の起業には、有料職業紹介事業の許可が不可欠で、財産・職業紹介責任者・個人情報管理・事業所・事業運営の5つの要件を満たす必要があります。また、申請から事業開始まではおおむね3〜4か月を見込んでおきましょう。

事業の立ち上げ期は求人開拓に時間がかかりやすいため、求人データベースの活用も検討 してみてください。求人の選択肢を増やしながら、求職者との面談など本来の業務に集中できる環境を整えることが、早期の成果につながります。

立ち上げ期の負担を軽くする選択肢として、「求人データベース|Bee」の活用も検討してみてください。

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柴田 充輝
合同会社柴田人事労務オフィス 代表社員
社会保険労務士 / 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 行政書士
柴田 充輝(しばた みつき)

厚生労働省やハローワークにて10年間勤務し、社会保険や労働保険、求職者支援の実務を担当。現在は業務経験や社会保険労務士としての知識を活かして人事労務や社会保険、転職支援などのコラムを執筆・監修。これまでに社会保険関係や金融関係の記事を中心に、1,200記事以上の執筆・監修経験がある。

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